渡辺 紀子

頂上付近は花崗岩の大岩壁 キナバル山全容

 キナバル山は、ボルネオ島の東マレーシア・サバ州にある赤道直下の4千メートル峰です。息子がマレーシアの大学に昨年8月から1年間の予定で研究員で行っていますので、そこを訪問がてら家族で登ろうということになり、この5月末に夫と出かけました。

 海抜0メートルのコタキナバルの街から、高度1,800mの登山口までバスで約2時間。そこで1泊。翌朝、登山手続きをすませ、ガイドを紹介され(ガイドを付けることが義務付けられている)出発。

 登山ゲート 登山道(1) 熱帯雨林の中を行く

登山道(2) 森林限界が近い ジャングル

 一日目の行程はラバン ラタ・レストハウス3352mまで、約6km。標高差1400m。森の中の道をほぼ上り一辺倒。大体1時間ごとにあずま屋と水洗トイレのある休憩所があり、登山道はよく整備されているが、階段が多く、私のコンパスではちょっと高すぎる箇所も多い。

 山小屋は完全予約制で、その予約が取れないと登らせないので、日本の夏山のように人であふれ混み合うことはなく快適。一階がレストランになっていて、朝食、夕食はバイキング。チャーハン、焼きそばみたいなものもあり、味もそれなりだ。部屋は6人用、2段ベッドが3組あり、かなり広い部屋でした。温水シャワーがあるということでしたが、私たちが着いた時は皆が一斉に使ったためか、温水というほど暖かではなかった。

早朝出発前、ラバンラタ小屋での朝食 夜明け前の暗い中、花崗岩の岩壁を登る

 二日目は、富士山同様、ご来光を見るため朝1時半起床、朝食ビュッフの用意があり、コーヒーとビスケットを食べ、ガイドとともに2時半出発。真っ暗な中、ヘッドランプをつけて登りはじめる。登山者のライトがところどころで光っている。約1時間ほどで森林限界に達し、登山者のIDのチェックしているサヤッサヤッ小屋(Sayat Sayat Mountain Hut)到着。ここを過ぎると花崗岩の大岩壁となる。日本で火山の山頂といえば火口があり、その周囲を”お鉢めぐり”というのが普通ですが、なんと山頂一帯が花崗岩のスラブでおおわれた大斜面で、そこにはコースを示すための白い綱がずっと引かれ、稜線にはDonkey Ears' Peak、Ugly Sister's Peak, South Peak, ゴリラの顔に見えるといわれるSt.John's Peak など、溶岩の隆起による奇怪な形状のピークが暁暗の中に並んでいる。やがて、すでに登頂した人の小さなヘッドランプの明りが星のように正面はるか行く手に見えはじめる。そこがLows' Peak(4095m)、キナバル山頂のようだ。

Donkey Ears' Peak Ugly Sister's Peak

South Peak ゴリラの顔に見えるといわれるSt.John's Peak

Lows'Peak(キナバル山頂上 山頂カール反対側の断崖絶壁

 周囲が明るくなり始めた5時半頃に登頂。頂上はとがった岩で非常に狭く2,3人が立つのがやっとの広さ。2本の標識があり、登頂者が代わる代わる記念撮影している。この標識の一つはローズピークの標高を示したもの、もう一つはこの山にはじめて登ったGunting Laguadanの名を記すもの。周囲は断崖絶壁、雲海が広がり、たくさんの奇妙な形のピークが見え感動。残念ながら雲が多くご来光は見られなかった。

頂上にて

 もう少し長く頂上にいたかったが、「遅くなるとスコールがある」とガイドにせかされて早目に下山。同じ道を下り、ラバンラタ小屋で再度、朝食をとり、10 時30分下山開始。途中食虫植物ウツボカズラ、珍しい蘭の花などを見ることができたが、最後はスコールにつかまり、1時間半くらい土砂降りの中を歩く。コースタイムより30分くらいの遅れで16:00頃下山。登山口まで来た所で雨がやみ、キナバルの山頂が高々と現れた。
 最近はあまり山登りをしておらず、トレーニング不足の私としては、「登れるところまで行こう」と思って登ったが、登頂できて満足!

ウツボカズラ 登頂証明書


 キナバル山は、登山道、アコモデーションなど、また、周辺の自然保護の面からも整備がよくできており、世界各国からの登山者を迎える準備が出来ている山だと思った。わが富士山も見習う点が多いのではないでしょうか