渡辺 啓三
コスミック岩稜は、シャモニー(フランス)の観光名所エギュー・ド・ミディ(3842m)の展望台直下から南西へ、モンブラン・ド・タキュールへ向かって伸びる約500mの岩尾根です。
2009年夏、モンブラン登頂の前に、高所順応を兼ねてトライしました。

この岩稜のロック・クライミングは4級。モンブラン、グラン・ジョラスをはじめアルプスの名峰を横目に巨大な花崗岩の岩壁をダイナミックに登り、最後のゴールは「観光客で賑わう"エギュー・ド・ミディ"の展望台へフェンスを乗り越えて闖入」というドラマティックなルートです。
手前の岩尾根がコスミック岩稜 右奥の山はモンブラン

麓のシャモニーの街からゴンドラを乗り継いで一挙にエギュー・ド・ミディの展望台まで上り、装備を付けて、両側とも切れ落ちた急峻なナイフリッジを、メール・ド・グラス氷河の上流であるジュアン氷河まで下りることから、このルートは始まります。
(photo by Google) 
氷河に辿り着けば、ルートはなだらかな下りとなり、コスミック岩稜を右手に見ながら進みます。


左手はモンブラン・ド・タキュール (4248m)
正面 奥はモンブラン (4807m)

クレバスを避けながら氷河を行けば、上空には、フランス側のエギュー・ド・ミディからイタリア側のエルブロンネへ30分かけて渡る3連式の観光ゴンドラが見えます。

岩稜にはアブリ・シモン小屋(3810m)から取り付きます。

緊張した登攀が続きますが、周囲の絶景に我慢しきれずカメラを取り出してスナップのシャッターを切ると「クライミングに集中しろ!」とガイドに睨まれました。


左手奥 グラン・ジョラス (4208m)
右手前 ダン・ド・ジュアン (4013m)



先行するパーティーの女性が垂直のスラブで足場を踏み外し、ザイルにしがみついて「Help !」

他人事ではありません。

まずは、無事にゴール近くまで辿り着きました。
ここまで来ればもう大丈夫。

エギュー・ド・ミディの展望台への"最後の登り"です。
やれ、やれ。やっと着きました。


展望台からのコスミック岩稜 まずは、めでたし、めでたし。