アフリカ旅行(その2)
 渡辺 啓三 ・ 紀子
 
 
 マウンテンゴリラは、ルワンダ、ウガンダ、コンゴーの国境に沿ったヴィルンガ火山地帯に7百数十頭が生息しているだけで、絶滅危惧種に指定されています。その中でルワンダは治安がよく、安全に野生のマウンテンゴリラを至近距離で見ることができると言うので、ルワンダ旅行中に、コンゴーとの国境に近いヴァルカン国立公園まで出かけました。

 この国立公園には現在13家族のゴリラが住み、このうち、7家族が厳しい制限の下で観光客の観察に開放されています。

 例えば、観察人数は1日あたり7グループ、1グループ8名までの合計56名以下。年齢は16歳以上。観察は午前中のみの1時間以内。必ずガイドが同行。ゴリラには7メートル以上近づかない。飲食物の持ち込み禁止。くしゃみをしない。唾をはかない。ゴリラを脅かさない。大声を出さない。フラッシュをたかない、等などです。
 
 
 さて、私達はルワンダの首都キガリから車で3時間ほどかけて国立公園管理事務所のあるルヘンベリー村へ行き、翌朝7:00に管理事務所に集合(定員の56名全員が勢ぞろい)、ガイドから行動中の注意を受けてジープに乗って出発しました。私達のグループはカナダから来た3人、オーストラリアからの1人と私達家族4人です。

  マウンテンゴリラは家族ごとにかなり離れて住んでおり、それぞれに名前がつけられています。私達のお目当てのゴリラは“HIRWA”(“希望”という意味だそうです)と云う名の家族です。

この家族は比較的近くにおり、最近双子の赤ちゃんが生まれたとのことで、期待に胸が膨らみます。

 
ジープに10分程揺られた後、トレッキング開始。痩せたじゃがいも畑の中の道を30分くらい歩く間にも「これがゴリラの糞です。」と教えられ、緊張します。

畑のはずれは、即ジャングルです。あらためて注意を受け、ライフル銃を持った護衛つきでジャングルに踏み込みます。

道はありません。先頭を行くガイドは藪を山刀で切り開きながら進み、そのあとに続きました。
 
 

息を弾ませて1時間ほど進むと「止まれ!」の合図があり、リュックサック、杖などすべてを置いて行くようにいわれました。ゴリラのいる場所に近づいたようです。
人の住む村落からこんな近くにゴリラがいるとは! 逆に言えば、ゴリラの住むこんな近くにまで人が住むようになっているとは!

あっ、いました、いました。木の上に1頭が見え、続いて、“シルバーバック”といわれる背中の毛が白くなっている大きな雄の成獣が現れました。 頭がヘルメットを載せたように出っ張っています。 
 
   
   
  次は、赤ちゃんゴリラを背中に乗せたお母さんゴリラの登場です。3ヶ月前に生まれた双子の赤ちゃんはお母さんゴリラの胸に抱かれていました。



 突然竹やぶから飛び出してきた2頭のやんちゃな子供ゴリラは、遊んでいるのか、けんかしているのか。組んずほぐれつ、所構わずに走り回り、転げ回り、とうとうその1頭は私の脚にぶつかってきました。突然のことで何が起きたのか分からず、ゴリラと気がついてびっくり! 隣にいた娘婿はヤッケの袖を引っ張られて大あわて!何も起こらなかった夫と娘は不満顔!
   

シルバーバックは悠然と構えて竹を食べ続けています。竹は栄養価が少ないので一日中食べていなければならないのです。でも、時には、赤ちゃんを抱いているお母さんゴリラの毛づくろいをしたりして、夫婦仲(一夫多妻ですが)はよさそう。このへんの様子は夫がビデオに撮っていましたので、又の機会にお目にかけたいと思います。 
   
 
  私たちが夢中でゴリラを観察している間、ゴリラの方は人間を全く無視して自由に行動していました。

野生の動物との自然な共存とはこういうことなのでしょう。ゴリラの私達に対する警戒心のなさは驚異的です。

餌をやって飼いならしたわけではなく、人間がただの無害の動物として自然にゴリラと触れ合えるのです。 
 
 1時間の観察時間はあっという間に過ぎました。ゴリラとの出会いの証明書を頂き、予想を超えた体験の興奮が続くままに、マウンテン ゴリラの山を後にしました。