黒 津 一 英
 1
 永井荷風の随想「日和下駄」の一節「今日東京市中の散歩は、私の身にとっては生まれてから今日に到る過去の生涯に対する追憶の道を辿るに外ならない。これに加うるに、日々昔ながらの名所古蹟を破却して行く時勢の変遷は、市中の散歩に無常悲哀の寂しい詩趣を帯びさせる。」

 また東京歴史散歩編集委員会編「東京歴史散歩60コース」の「はじめに」に書かれた次の一節「都心と副都心を中心にまだまだ使用に耐えるはずの建物も、次々に新しい建築にとって変わられている・・・それは古い文化の破壊である。」

 以上に目を通して、私は深い感銘を受けずにおられなかった。

 かくして、東京各地に散在する大江戸文化の史跡、明治、大正、昭和に活躍した文人、墨客の遺跡に対する憧憬止み難く、昭和57年5月、友と「東京歴史文学散歩の集い」を開始し、平成12年10月、135回で修了するまで20年間続くこととなった。
 昭和47年10月、友と共に飛鳥大和路の旅に出た。折しも秋も深まり、当日は絶好の旅日和であった。
 この旅行で旅の楽しさを満喫した私は、友を誘い夏休みを利用し、約四泊五日の旅を全国に繰り広げ、30年の長きに及んだ。
 これら散歩、旅の記録を全部保管していたので、同好の士にいささかなりとも参考になればと思い、一冊に纏め出版したのが本書である。
 皆さん! 散歩の楽しみ、旅の喜びを十二分に堪能してください。
(平成18年11月10日)
 (街の方々の催し物)
ホームへ 戻る